冬眠。
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それは舌の上であっという間に溶けて消えた

2010-02-03 Wed 00:51



着替えてコンポのスイッチを入れた後、背の低いガラスのコップに飲むヨーグルトプレーン味を八分目まで注いだ。白くとろりとした液体が、とろとろと揺れている。スピーカーから静かに流れ始めたジャズ、sing!sing!sing!を聞きながらゆっくり口づけ、少しずつ口内に流していく。口に入った飲むヨーグルトは、見た目同様、とろりと舌に広がった。記憶にある味よりも甘いそれに若干驚きながら、角度を急にして一気に飲み干す。
近くにあった印刷機の上にコップを置き、唇をなめる。ヨーグルトのとろりとした感触が、わずかではあるが舌に感じられた。少し伸びをして固まった筋肉をほぐしながら、パックを手に取り台所に向かう。胸のあたりまでしかない一人暮らし用の冷蔵庫を開ければ、中には野菜から出来合いのお惣菜、賞味期限が切れたお茶、知人からもらったジュース等が無秩序に収納されている。サイドポケットで倒れているソースやマヨネーズを起こし、空いたスペースにパックを置く。ヨーグルトは、まるで一年前からそこにあったかのようにぴったりと、違和感なくおさまった。
何の飾りけもないグレーの扉を閉め、一つしかない部屋に戻ろうとしたとき、電子レンジの上にあるリンゴが目に入った。手を伸ばしてとってみる。それは、3日ほど前に近所のスーパーで買った一玉78円のサンふじだった。回しながら表面を見た後、それと一緒に部屋に戻る。
ベッドに腰掛け、着ていた上着の裾でリンゴの表面をきゅっきゅっと磨いた。少しこするだけで、赤い皮はつやつやとした光沢を取り戻し、いかにも美味しそうな色を放つ。一通りこすり終わった後、もう一度ぐるりと見回して、リンゴを右手に持ったままぼふっとベッドに腹ばいになる。膝を曲げてぶらぶらさせながら、枕をうで起き代りにして、しばらくの間つやつやと光るリンゴを眺める。下のほうに少し青さが残り、上のくぼんだ所の近くに小さなこぶがある。そのこぶの部分を指でなでてから、リンゴを目より下に持ってきて、目を閉じて匂いをかぐ。甘い香気が、ふわりと鼻腔をくすぐる。
ちらりと時計を見ると、23時43分くらいだった。少し考えてから、まあリンゴだし、と思ってその赤い皮ふに歯を立てる。前歯が皮を突き破り、そのすぐ下にある白っぽい果肉をえぐり取る。しゃく、という音と同時に、リンゴの一角がへこみ、口の中に甘い果汁と白い果肉、赤い皮が入り込む。口を閉じ、それらを咀嚼して飲み込む。リンゴのえぐられた部分にも透明な果汁がたまり、耐え切れなくなったようにあふれて表面を滑る。ベッドに落ちる前に、舌をのばしてそれをすくい取る。先端に触れると、それはすぐに舌全体に広がり、極上の甘味を味わわせてくれる。
リンゴは切ったり皮をむいたりせず、そのままかぶりつくのが一番おいしい。とくに、サンふじ。というようなことを考えながら、しゃくりしゃくりと食んでいく。新たにかぶりつくたびに口のまわりにも汁がつくが、そんなことには構わない。芯のほうにある果肉は、少し酸い。でも、その酸味が新鮮で、それを求めてもう一度芯のあたりに薄く歯を立てる。
芯の部分を残して、これ以上食べる場所がなくなったリンゴをぼんやりと眺める。無骨な彫刻家が削ったオブジェのようになったそれは、元が不格好な球体だったとは想像ができない。
いつまでもそうやって見てるわけにはいかないので、捨てるためにのろのろと起き上がり、ぺたぺたとフローリングを歩いて台所に行く。土や雨、埃で薄汚れた明り取りの窓を通して、前の廊下を照らす蛍光灯の白い明りがうっすらと差し込み、地域指定の生ごみ袋の場所を示してくれる。

名残惜しくて最後にもう一度食んでみたりんごは、芯の部分なのになぜか甘かった。

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久しぶりに書きたくなって、衝動的に書いたら、結果的によく分からないものができてしまった。
しかし、相変わらず書くときの癖というのは健在。成長しないなと思ったけど、ここ数年こういうもの書いてなかったんだからそれは当り前か。
もっとこう、官能的かつエロチックに書けるようになりたい。
文章に必要なのはエロスだと思う。ここでいうエロスってのは、具体的な性描写じゃなくて、何気ない行動をどれだけ色っぽく書けるかってことね。日常でなんとなく繰り返される動作というのは、異化してみるとじつはすごく艶っぽいんじゃなかろうか。しかし、エロスはただただ色っぽくて美しいだけじゃなく、そこには必ずなにがしかのグロテスクなにおいも漂ってる。
また現実逃避でいろいろ書いてみたい。できれば長編にも手を出してみたいけど、体力とか考えると中編が限界かな。

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この記事のコメント
エロスは必要だということに賛同。
林檎のように鼻に近づけると香るものから、
ドアを開けると洪水のように飲み込まれる香りまであると思うんだ。
あれ、なんでエロスは「香り」だと自分は思っているんだろうか。
自分もエロい写真が撮れるようになりたい。
2010-02-03 Wed 14:28 | URL | 高峰 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
Re:
ナカーマ。
一言で「香り」といっても、軽いのからどっしりくるのまで色々あるね。今度はその、飲み込まれるようなのを書いてみたい。
写真がんばれ。エロス漂う写真がとれたらみせてほしい。

2010-02-03 Wed 22:18 | URL | 氷月 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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